①中長期計画策定のリスク
未上場の会社でも銀行等への提出資料として、今期の事業計画を提出することがあります。一年弱くらい先の見通しになりますが、スタートアップを乗り越え軌道に乗りつつある会社であれば作成するのはそれほど難しいものではありません。
上場準備に入ると中長期計画の策定が求められます。
ビジネスモデル(儲ける仕組み)が確立されている会社であれば、少し目線を上げて中長期の目標を設定することも意義のあることかもしれません。
しかし、まだビジネスモデルが確立されていない(足元の業績をしっかり見極めないといけない)段階の会社では、中長期の事業計画を立てても精度が低く楽観的すぎる計画になってしまう危険性があります。作っただけならまだいいのですが無理に数字(規模)を追いかけてしまうと、未成熟なビジネスモデルが崩れてしまい業績が悪化することもあります。
②会計処理方法の変更に伴うリスク
上場企業と未上場の会社では会計処理方法が異なります。上場準備にはいると、上場企業と同様の税効果会計や減損会計、資産除去債務、各種の引当金の設定など、これまで直接関わりのなかった金融商品取引法に基づいた会計処理をしなければなりません。また、売上、仕入を計上するタイミングも変えなければならないこともあります。その結果、業績に対する経営者の感覚にズレが生じ、経営判断を誤らせてしまう危険性があります。
回避するためには、これまで経営の判断材料にしてきたKPI(KeyPerformanceIndicator;重要業績評価指標)、つまり、問合せ数や来店客数、受注率や歩留といった業績への関連性の高い指標をブレずに管理し続けることです。
上場企業の会計処理が必ずしも未上場の会社の会計処理よりも優れているという訳ではありません。あくまで情報を開示する利害関係者、会社の規模や置かれている環境によって会計処理が異なるだけなのです。
③離職率が上昇するリスク
上場準備は、会社全体を巻き込んだ大きなプロジェクトです。このプロジェクトを引っ張っていくのが管理部門、いわゆるバックオフィスの方々になります。上記の会計処理方法の違いや適時開示に対応するため経理・総務部門を強化したり、労務関係の整備のために人事・労務部門を強化することになります。
バックオフィスの方々が、上場という“錦の御旗”のもと有無を言わせず新しいルールを作成し従わせてしまうと、これまで会社を支えてきた営業などの現場の方々が不満を抱えたまま新しいルールで業務を行う事になります。激務で余裕のないバックオフィスの方々と、やりづらさを感じている現場の方々の間に溝が出来てしまうと、業績や上場準備の進捗に悪影響が出るばかりでなく、退職者が増える事があります。
上場準備を始めるにあたっては、予めその目的や意義を全社員にしっかりと伝え、十分な理解と協力を得ることが大切です。
④資金繰りを圧迫するリスク
上場準備にあたり、監査法人、主幹事証券、証券印刷、証券代行、必要に応じて上場コンサル等の専門家や、場合によっては新しいシステムの導入も必要になってきます。また、バックオフィスを強化するために新たな人材を採用しなければなりません。その結果、固定費を中心とする経費が増加します。上場までの期間や課題の内容にもよりますが、上場までに数千万円のキャッシュアウトを見込んでおく必要があります。
十分に資金があり今後も上場準備に係る資金を負担することのできる会社は問題ありませんが、月次ベースでの利益が小さかったり、業績の変動が激しかったり、資金収支にズレがある場合は途中で資金ショートする可能性がありますので、ベンチャーキャピタル等からの第三者割当増資も含めた資金手当ても考えていく必要があります。いずれにしても、資金計画はしっかりと立てたうえで上場準備を始めることが重要です。
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